3DプリンタでMini-ITXのNASケースを印刷して自作する

3年半ほどNanoPi M4を使ったNASを運用していた。 しかし、Armbianのメンテナーがいなくなったり、瞬電でmicroSDが死んだりと運用し続けるうえで問題点が増え、ついでにHDDの容量も4TBから増やしたいので、新しいNASを組むことにした。

Single Board ComputerでNASを組むという選択肢

今まで使っていたNanoPi M4の良かった点として、HDDへの給電が容易であることがあげられる。SATA HATは12VのDCジャックで給電可能で、それを4pinペリフェラル電源とNanoPi M4へ分配してくれる。

他のNAS用のSBCとしてはRadxaのSATA HATがある。しかし、4pinペリフェラルでのみ給電可能で、4pinペリフェラル電源を用意するには結局ATX電源が必要であるため、コンパクトにはまとまらない。ATX電源は意外と大きい。

Mini-ITXNASを組む(ケース)

市場にはMini-ITXケースが数多く出回っているがそのニッチさからか、本体数万円のものが多く、Aliexpressなどで売っているものはその大きさから送料が軒並み1万円近い。また、ATX電源が大きいのであまりコンパクトにならない。Mini-ITXの寸法は170mm×170mmなので大体の家庭用3Dプリンタでケースが印刷できるサイズである。そのため、今回は3DプリンタMini-ITXNASケースを印刷して運用することにした。

放射ノイズ?知らない子ですね。巷にあふれてる透明なサイドパネルに導電性を持たせているまともな商品がいくつあるんだよ。

3Dプリンタのフィラメントは難燃性でないし、燃えたら自己消化性も期待できないので、本当に自己責任である。

電源問題

電源はHDD数台とボードが動けばいいので200Wもいらない。数百W程度であれば、DCジャックからATX24pinに給電する電源ボードが売っているのでこれを試してみることにした。 (中略) 自己責任

Mini-ITXのボード

要件としては

  • そんなにCPUパワーはいらない。むしろ省電力化したいのでオンボードCPU。
  • 今までNanoPi M4に2.5GbEをつなげていたので、2.5GbE以上は必須。
  • SATAポートが4ポート以上は欲しい

というボードを探していたが、まともに手に入るオンボードCPUのMini-ITXボードはCPUの世代が古く、新しい世代のCPUはベアボーンしか存在しない。そこで、Aliexpressも探してみるとIntel Celeron N5105搭載で2.5GbE×4、SATA×6、M.2×2のおあつらえ向きなボードが売っていた。25,000円と決して安くないものをAliexpressで買うのは怖いが、ほかに売っていないものはしかたがない。そう、やむを得ないと自分に言い聞かせてボードはこれを購入した。

ケースの印刷と組み立て

200mmの印刷上限ギリギリの直方体を印刷することをしたことがなく、たくさん失敗した。

もともと複数パーツを組み合わせる設計だったが、大きな直線を印刷するので反りがひどく、印刷終了直前は樹脂の弾性によって精度が足りず、設計を白紙に戻した。800g近いフィラメントを一気に印刷するのでノズルが詰まり、3年ほど使ったi3megaのヒートベッドの温度センサの配線が断線し、それを直したら今度はヒートベッドの給電線が金属疲労で粉になっていた。

そんなこんなで印刷し終わったケースがこれである。

Mini-ITXのボードも無事?着弾した。 動作確認をしてみると、HDMIが死んでいる以外は一応正常に動作した。(DPは生きているのでヨシッ!)DC-ATX給電も正常に動作しているのでこれで行こうと思う。(SATA給電のケーブルがやけに細いのが若干怖いが...)

16GBのメモリモジュールも認識したのでIdeapad S540のメモリ交換で余っていた4GBと合わせてメモリは20GBで運用することにした。OSドライブは同じくIdeapad S540のSSD交換で余っていた256GBのNVME SSDを使いまわし、HDDは最近発売されたWDのCMRの6TBのWD60EZAXを3枚購入した。

そんなこんなで組み立てていくのであるが、配線のクリアランスがあまりにもなさすぎる。

ファンはScytheの9cmファンを買ったのだが、ファンとのクリアランスがL字SATAコネクタでもギリギリで明らかに設計ミスである。誰だよこれ設計したの 薄型ファンを買うとよかったのだろうが、普通の厚さのファンを買ってしまったので後の祭りである。

何とかピンセットなどを使い、HDDとの配線をしてケースに収めた。 なんだかんだ構想から2ヶ月以上かかってしまったが、一応形にすることはできた。

印刷時とカバーの色が変わっているのは電源スイッチとLEDの穴を設計し忘れたあほがいるからである。

ベンチマーク

無事組みあがったのでTrueNAS Scaleを入れてSMB共有のフォルダに対してCrystalDiskMarkをとってみた。

まあ、キャッシュ内ならこんなもんである。

大まかにかかった費用

  • 本体
購入物 価格(当時)
CW-N5105-NAS 25,000
DC-ATX給電ボード 1,500
120W AC-DC電源 2,200
フィラメント2色 4,000
ペリフェラル4pin→L字SATA×4分岐 900
L字SATA×4分岐 700
9cmケースファン×2 1,800
4ピンファン電源3分岐ケーブル 600
失敗したフィラメント 4,000
DDR4メモリ16GB 4,900
余っていたDDR4メモリ4GB ?
余っていたSSD256GB ?
M3スペーサー・ナット・ねじ 400くらい
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本体代合計 46,000+α
  • ストレージ
購入物 価格(当時)
WD60EZAX 3台 32,000

まあ、x86_64で6ベイNASで2.5GbE対応とスペックの割には安いけど、自作なんでこんなもんだろう。

モデルデータはGithubにおいておきます。

github.com